> お知らせ・新着情報 > 04 【ハンセン病を正しく理解する講演会2018】...
・関東講演会 6月23日(土) 国立ハンセン病資料館
講師は全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長の藤崎陸安さん。
「ハンセン病の現状と課題」と題して、政府の誤った政策によって人権が侵害されてきた過去の状況と、現在は生活や医療などの提供を受け平穏に生活しているが、もう平均年齢86歳になろうとしている。このハンセン病に関わる歴史を後世に伝えることの必要性を訴えられました。(参加者は約100名)
・関西講演会 6月30日(土) 日本キリスト教会西宮中央教会
講師はハンセン病家族訴訟原告副団長の黄光男さん。
「家族を引き裂いたのは誰だ」と題して、政府の喧伝によってハンセン病への間違った偏見が一般市民にも植え付けられた結果、ハンセン病家族であることをずっと周囲に隠して生きてこられたことを、穏やかな語り口で、またギターの弾き語りを交えて話されましたが、家族を引き裂いたのは誰だ?という問いの前に聴衆ひとりひとりが立たされた思いで、心に深く響く講演でした。
(参加者は約75名)
ハンセン病を正しく理解する講演会2018 関東
「ハンセン病の現状と課題」
講 師/ 藤崎陸安さん
国立療養所多磨全生園入所者
全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長
日 時/ 2018年6月23日(土) 午後2時~4時
会 場/ 国立ハンセン病資料館 <協賛>
講師の藤崎陸安さんは、全療協事務局長に就任された2010年にも講演をお願いしました。その折には、主に行政の誤った政策や今なお続く不作為などを訴えられました。
今回は、行政のみならず、司法(裁判所)、立法(国会)の責任、ひいては一般社会の「知らない、知ろうとしない罪」を指摘され、聴衆の一人として襟を正される思いでした。
演題の「ハンセン病の現状と課題」に示されるように、過去の誤った政策から現在の療養所の置かれた現状、それに対する今後の取り組みという組み立てで講演されました。
過去の具体的な例としては熊本で起きた「菊池事件」を取り上げ、ハンセン病に対する凝り固まった差別、偏見によって、冤罪がでっち上げられる経緯を明らかにされました。裁判所ではなく療養所で開かれた「特別法廷」の違憲性が、司法で問われているところです。
現在の状況としては、入所者の減少、高齢化に伴って、行政の医療や介護の人員削減の問題、特に園長給の低さなど、事務局長として一般には知りえない情報なども明かされました。
そして、全療協としても高齢化に伴う人員不足によって、将来構想を立てることが難しくなっている現状を話され、そのために外部の有識者による「人権擁護委員会」や「有識者会議」などを立ち上げて、充実を図っているということでした。
終わりに、強制隔離で療養所での生活が強いられてきたが、国や一般社会の正しい理解によって、安心安全に暮らすことができ、入所者たちが「生きてきてよかった!」と言ってもらいたい、それが全療協の願い、と締めくくられました。
ここ数年、国立ハンセン病資料館で講演会を開いていますが、入館者の方が講演会の看板を見て初めて聴きに来られる方も多く、よい広報、啓発活動になっています。
(記:三吉信彦)

講師・藤崎陸安さん 1

会場風景

講師・藤崎陸安さん 2

会場風景
ハンセン病を正しく理解する講演会2018 関西
「ハンセン病回復者と家族の訴え」
講 師/ 黃光男さん
ハンセン病家族訴訟原告団副団長
日 時/ 2018年6月30日(土) 午後2時~4時30分
会 場/ 日本キリスト教会 西宮中央教会
「家族を引き裂いたのは誰だ~ハンセン病家族からの訴え~」
講演者:黄光男(ファン・グァンナム)さん
(ハンセン病家族訴訟原告団副団長)
6月30日(土)西宮中央教会において、黄光男さんによる講演(ギターによる歌含む)が行われた。会場には74名の参加者が集い、黄さんの体験と、歌に込められた熱いメッセージに一同耳を傾けた。これまで好善社の講演会でも、ハンセン病回復者の家族の証言・訴えを伺う機会はなかったが、今回はご家族の思いや痛みを知る非常に貴重な機会となった。
黄さんは物心つく前に、ハンセン病を病んだ母親と姉が家族から引き離された過去を持つ。肉親がハンセン病に罹患したことだけでなく、患者に対して国家が強制隔離政策を施行していたためである。引き離された当時の家族の状況や心境などを、過去の記録(パワーポイント)を用いて伝えてくださった。この講演の基調にあったものは、国家によって分断された患者だけでなく、家族も抱え込んだ深い苦悩と断絶の傷跡であった。家族を引き裂いたのは誰だ……それは当時の国家であるが、同時にその政策を受け入れ、助長し、協力的であった多くの一般市民である。このことは過去と未来に対して責任を持つ国民として、私たちが真摯に受け止めるべき事柄であると感じた。黄さんの魂の叫びともよべる「閉じ込められた生命(いのち)」という歌は、断罪ではなく、あるべき人や国の姿を問うていた。
黄さんはかつての50年余り、ハンセン病患者の家族であることを隠していたという。その彼を「居直らせた」(ご本人の言葉)のは、「恥でないものを恥とするとき、本当の恥になる」という林力さん(はやし・ちから『癩者の息子として』の著者)の言葉だった。本来、恥でないものを社会が「恥」と見做す時、本人もそれを「恥」と見てしまうと。人間の尊厳とは何か。本来「恥」でないものを「恥」としない理性と勇気を、まず私自身が身につけたいと学ばされ、強く感じたひと時であった。
(文責 渡辺圭一郎)

講師・黄光男(ファン グァンナム)さん

講師のギター演奏

講演会会場風景

講師を囲む懇親会