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講演会報告

2022年 ハンセン病を正しく理解する講演会報告

【関西の部】2022年7月2日(土)14:00~ 会場:日本キリスト教会西宮中央教会

講師:大高俊一郎(おおたか・しゅんいちろう)さん  (国立ハンセン病資料館事業部啓発課課長)
テーマ:「ハンセン病の歴史を忘れない」
~その被害と教訓に学ぶ~

参加者:会場参加33名とリモート参加60名

ハンセン病患者が辿った苛酷な人生を学ぶ

 3年ぶりの好善社の「ハンセン病を正しく理解する講演会」の関西の部は、国立ハンセン病資料館事業部社会啓発課長の大高俊一郎さんを講師に迎え、西宮中央教会を会場に開催された。最初に、国立ハンセン病資料館が作成した「知っていますか? ハンセン病問題」とい啓発ビデオをDVDとYouTubeで視聴し(注)、ハンセン病の医学的な特徴とハンセン病問題の歴史について学んだ。
 次いで講師は、1954(昭和29)年に熊本県にある国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」で起こった「黒髪校事件」を取り上げた。菊池恵楓園にあった「竜田寮」に住むハンセン病の親を持つ健康な児童を、学区内の黒髪小学校へ通学許可を求めたが、PTAの強硬な反対にあった。さらに、許可してあげるように提案した近隣の小学校が、「では、そちらで引き受けてくれ」という逆提案に「うちでは引き受けられない」と拒絶した出来事を紹介して、「差別は、自分のことになった時、姿を表す」と述べられた。
 園内での結婚は許されたが、出産し子どもを育てることは許されなかった。そのため男性は断種手術、女性が妊娠した場合は中絶を強制された。群馬県にある国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」の詩人・桜井哲夫さんが綴った記録が紹介された。妊娠6ヵ月の妻の中絶を手伝わされた桜井さんは、まだ息のあった我が子を冷たくなるまで胸に抱いていた。真理子と名前をつけ、後に書かれた彼女を悼む「真理子曼荼羅」という詩が読み上げられ、ハンセン病の患者さんたちが辿ったあまりに残酷な人生が、浮き彫りにされた。
 1996年、「らい予防法」が廃止されたが、外で暮らすには歳を取りすぎている、体が不自由、一緒に暮らす家族がいない、差別が恐ろしいなどの理由で、ほとんどの人が病気は治っているのに、療養所で暮らす以外選択肢がない状態にある。2022年5月現在、全国の療養所の入所者は927人、平均年齢は87.6歳である。ハンセン病の歴史から学ぶべきことは何か。現在でも、新型コロナ感染症の患者、家族、医療従事者が差別を受けるということが起こっている。もう一度、自分のこととして真剣に考えるべき問題である。

(好善社社員・橘俟子記)

(注)「知っていますか? ハンセン病問題」のURLは次の通り。
https://www.youtube.com/watch?v=5GgIcVND9LI

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