2022年 ハンセン病を正しく理解する講演会報告
【関東の部】 2022年6月25日(土)14:00~ 会場:日本基督教団 千葉教会
講師:阿部春代(あべ・はるよ)さん (公益社団法人 好善社理事・看護師)
テーマ:「タイ国に長期滞在を許されて」
~看護師の30年~
参加者:会場参加47名とリモート参加25名
聴衆の心を引き付けたタイ国派遣看護師の活動
関東講演会の講師を阿部春代理事が務めることは、3年前から決まっていた。しかしコロナ禍のために延期を重ねて、ようやく今年6月25日(土)午後2時、日本基督教団千葉教会にてズーム併用で開催された。初めての試みで運用に不手際もあったが、映像を用いての講演は好評であった。
ひとりの看護学生が、初めてハンセン病療養所を訪れた。その時の衝撃が彼女の人生を決定づけた。療養所教会の信者との出会い、好善社のワークキャンプを通してハンセン病療養所の看護師への道が開かれ、それが最終的に「タイ国派遣看護師」に結実してゆく。それら一つひとつの体験、エピソードが聴衆の心を引き付けたようだ。
講演の後半は、1990年7月にタイ国東北部のハンセン病療養所病院に派遣され、もっぱら元患者の後遺症に取り組む話。ハンセン病は末梢神経・知覚・運動機能麻痺により手足に変形をもたらし、傷を負い易いという後遺症をもつ。阿部さんはその傷を洗い、硬くなった皮膚を削り、ワセリンを塗る一方で、元患者自身が自覚して手足を清潔に保ち、傷の手当をする「セルフケア」を心がけるよう働きかけてきた。その成果が見られた、という時の彼女の喜びの表情は印象的であった。
話題はタイ国・日本の「青少年ワークキャンプ」、タイ国在住者として同胞青年を招く喜びとタイ人若者を指導するこの機会は、毎年、彼女を興奮させる。タイ人青年リーダーたちが育ってきている手応えを感じて喜んでいた。
阿部さんは2019年7月に病院勤務を終えたが、好善社のタイ国駐在員として高齢の元患者のケアやチャンタミット社と好善社の仲介役を務めている。今なお、タイ国にとどまって働く喜びを語っていた。
講演内容は、ひとりの看護師の、しかもかなり特殊な経験の報告である。確かに「ひとりでタイ国に」「足を洗い続けた30年」は、誰にでも出来る体験ではない。阿部さんの講演を聞きながら、「阿部さんはさすが!」「私にはできないな!」と思う一方で、ハンセン病療養所とその入所者の方がたと出会った私たちに、そして聴衆一人ひとりの心に、「あなたはどうする?」と問いかけるものがあった、そのように確信した次第である。
(好善社代表理事・三吉信彦)