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「ハンセン病問題」の今に関わる|好善社の働き|公益社団法人 好善社

 「らい予防法」廃止23年、その間、「国家賠償請求訴訟」勝訴・「ハンセン病問題基本法」の施行が実現していますが、さらに元患者・入所者のいのちの尊厳と名誉回復と「ハンセン病問題」の早期解決を願って。
◆「特別法廷」「元患者家族の賠償訴訟」など未解決の課題に注目して、関わります。
◆「療養所の将来構想」などが全うされるように支援をします。

ハンセン病問題の今

 日本国内ハンセン病療養所は、2019年5月1日現在入所者数1,211名となり、平均年齢は85.5歳。急速な高齢化です。
 ハンセン病問題は、「らい予防法」廃止23年を迎え、その間、2001年「国家賠償請求訴訟」勝訴・「ハンセン病問題基本法」の施行など解決に向かっているかのようですが、いまだ「療養所の将来構想」「特別法廷」「元患者家族の賠償訴訟」など、十分な解決をみていません。
 誤った国の法律「らい予防法」が1996年に廃止され、国がその間違いを謝罪しても、ハンセン病問題はまだ終わっていません。療養所に今も留まることを余儀なくされている入所者、退所して社会復帰した方々、またその家族は、平和な暮らしを取り戻すことができたのでしょうか。
 「ハンセン病家族訴訟が2016年に提訴され、今年2019年6月28日に、熊本地裁で勝訴判決が出ました。そして、7月9日、安倍晋三首相は、ハンセン病元患者家族への差別に対する国の責任を認めた熊本地裁判決を受け入れ、控訴を断念する方針を表明しました。しかし、同時に出された政府声明は、判決を否定するような内容を含んでいます。今後の回復者および被害家族の「人生被害」の賠償の削減と、社会の偏見差別の啓発に取り組む責任をぼやかすかのような意図が見え隠れしています。
 このような状況の中で、私たちも市民としてかつて、この「人生被害」への無自覚的に加担をしていたことを心に刻み、市民レベルでの自発的な啓発活動と、国や政府の取り組みを見守っていく責務があります。

2019年 ハンセン病を正しく理解する講演会

関西の部 2019年6月22日(土)14:00~ 会場:西宮中央教会

講師:坂手悦子(さかて・えつこ)さん  (邑久光明園ソーシャルワーカー)
テーマ:「療養所の現場と向き合って」
~ソーシャルワーカーの願い~

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    講演後、講師を囲むお茶の会

ハンセン病療養所の現場と向き合う「木を見て、森も見る」
ソーシャルワーカーの二つの視点

<講演を聞いて> 好善社社員 山本公子

 講師の坂手悦子さんは国立療養所邑久光明園において、ソーシャルワーカーとして活動中の方です。療養所の現場でどんなことが起こり、どんな思いで今活動されているのか期待して講演を伺いました。
 ご自身のハンセン病との関わり、その現場で働かれるようになった経緯、思いが語られ、現在の仕事の内容、療養所の現在の状況、そこから生じる問題、課題、光明園が取り組んでいるエンド・オブ・ライフケアチームのことなど話されました。
 入所者平均86歳の療養所は、ターミナルケアを必要とする老人施設です。具体的な任務は当然のことながら、公正証書、遺言の作成、死亡後の手続き、葬儀、遺骨の扱い、金銭管理など。これらの業務は療養所に限らず必要なことであるが、家族の行うことである。しかし子どものいない、親族との縁を切っているひとなど、ハンセン病療養所特有の問題と向き合わざるを得ないことになる。親族、家族を探すこと、その経緯の中で、今もなお、家族親族の中に療養所に在籍していることを知らされていなかった方、知っていても、関係を持ちたくないという親族のあること、ハンセン病が負わされた社会的被害に向き合わされる。
坂手さんがそれらに対応される体験の中から、ソーシャルワーカーとしての立場、「木を見て、森も見る」という視点に立つと説明されました。木を見る視点は一人一人目の前にいる入所者の方に寄り添い、その方々が抱える問題に向き合う目。その背後にある問題を制度や枠組みにとらわれず客観的、全体的に社会を見る目。二つの視点に立つことを説明されたことが印象的で、療養所で長年働いて得たソーシャルワーカーとしての坂手さんの見識であろうかと感じ入りました。そうしたソーシャルワーカーがすべての療養所にいていただきたいと願いました。
そして、私たちは、そこから発信されることに注意深く耳を傾け、なお残る不条理な社会の枠組みや対応には声を上げ、側面から是正へと行動を迫られているのだと思いました。どれほど多くの不条理な社会的偏見の中で人権蹂躙がなされたか、納骨堂に眠る無念の魂に、また、家族の悲劇を担って苦しむ方々が報われるようにと願いました。
今回の講演会は、数名の車いすでの参加者、家族の会の方、回復者、メデア関係者など90名近い参加者で盛会であった。

関東の部 2019年7月6日(土)14:00~ 会場:國立ハンセン病資料館

講師:徳田靖之(とくだ・やすゆき)さん  (弁護士:ハンセン病家族訴訟弁護団)
テーマ:「ハンセン病家族訴訟が問いかけるもの」

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市民社会の無自覚的かつ不作為の視点と
なお残るハンセン病に対する差別・偏見の現状

<講演を聞いて> 好善社社員 棟居 洋

 今回の講演のテーマは、当日配布されたレジュメで指摘された二つのテーマです。これは互いに密接な関連を持っています。その点を中心に、以下感想を述べます。

 ①家族訴訟の意義を社会の側の責任という視点で明らかにすること。
 ②ハンセン病隔離政策の歴史から、ハンセン病に対する差別・偏見の現状を明らかにすること。

 ①の点は、今回のハンセン病家族訴訟で熊本地裁が出した判決は、元患者の家族に広く「人生被害」(この表現はこの訴訟弁護団が用いた表現)とも言えるような重大な人権侵害をもたらしたことの責任は、国にあることを明らかにしました。なぜなら国は、強制隔離政策という国策を推進し、また各都道府県にいわゆる「無らい県運動」の実施を促し、それが社会に広く「ハンセン病は恐ろしい伝染病」だという誤った知識を植えつけ、それによって国民の間にハンセン病の病歴者やその家族を差別する「社会構造」を形成する促進剤を提供したと判決文が言っているからです。
 そして、徳田さんはハンセン病の病歴者の家族が受けてきた人権被害の実態を強い印象を与える具体例を示しながら、話されました。さらに、この判決が単に国のこれまでの過失・不作為による人権被害の責任を断罪したものに留まらず、私たち一般社会の側の責任を問うものでもあるということに視点を置いて語られたことに私たちは注目しなければなりません。つまり私たちは各々改めて一般社会の一員として自分もこの人権被害の加害者ではないのかと問うことでこの問題に向き合うことを求められたということです。
 言い換えれば、私たちはこの問題に関し、意識的にあるいは無意識的に犯した過失・不作為の罪を真正面から受け止めなければならない、ということです。そのため徳田さんは、最初の自己紹介的な話の部分で、ご自分の生い立ちや若い時のキリスト教との出会い、またハンセン病問題に関わることになった経緯、つまり言ってみれば徳田さん独自の個人的な事情に属することを語られ、今出会っているハンセン病の問題は他人事ではない、今自分に突きつけられた問題だと捉え、自分はそれにどういう姿勢で関わっていくべきか、ハンセン病の問題は今の自分に何を問いかけているのかを誠実にご自分に問いかけつつ話されたのだと思いました。
 このようにご自分も含めて一般社会の側の責任を明らかにする思いをもって、②のテーマを講演の柱に据えたのだと思いました。それに触発されて聞き手である私たちも、ハンセン病問題に関わる自分の姿勢を改めて問われた思いをもちました。私たち一人ひとりがハンセン病の問題から何を問われ、何を答えていかなければならないのか、という問いの前に改めて立たされたということです。そこで徳田さんは次にご自分も含めて私たちの心の根深いところに潜む偏見・差別の意識をまさに白日のもとに曝すために、もう一つのテーマである②ハンセン病隔離政策の歴史から、ハンセン病に対する今なお根強くある差別・偏見の現状を明らかにする話をされたのだと私は受け止めました。

 ②のテーマについては、豊富な具体例を挙げながら差別・偏見の現状を明らかにしてくださいました。特に2003年11月に起こった黒川温泉ホテル宿泊事件を取り上げた話の中で、ホテルが当時の熊本県知事の厳しい批判を受けて、宿泊拒否を撤回して療養所まで来て元患者の方々の前で謝罪をしましたが、それを聞いた元患者の方々が激しい口調で抗議したことに対し、全国各地から300通を超える療養所入所者に対する誹謗中傷の文書が殺到したことを取り上げられました。
 その文書の一つには、元患者の方々に対して《あなたがたは世間の人から見れば気持ち悪い顔や姿をしている。だからホテルの一般宿泊者に不快な思いをさせないような気配りをする謙虚さを持ちなさい。今回のホテルの件で又、慰謝料とか賠償とかに話をもって行かれるつもりでしょう。身体ばかり醜いだけではなく心までも醜いですね。謝罪をされたホテルの人に対して、声高らかに抗議している貴方達の見苦しさに我慢できず便りしました》という意味のことが書かれていました。
 徳田さんはその他にも酷い言葉で元患者の方々を誹謗する文書も示しながら、《誹謗中傷した人々は、1996年に「らい予防法廃止に関する法律」が成立し、次いで2001年に「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟原告全面勝訴の判決が出て当時の小泉首相が国は控訴を断念することを表明した時にも、それらに拍手喝采して喜んだ人々でしょう。それは、元患者の方々が、あくまでも誹謗中傷の言葉を浴びせた人々から見て「気の毒な人々、可哀想な人々として憐れみの対象」であったからです。つまり元患者の方々がそのような枠の中に収まっている限りで、彼らに関わっていただけで、元患者の方々がその枠―これこそ憐れむ側と憐れまれる側を差別する枠です―を超えて自らの人間としての当然の権利を主張すると、あなたがたにそんな資格や権利があるのか、と発言するのです。まるで元患者の方々が人間失格者であるかのような誹謗中傷の言葉を投げかけるのです。》という意味のことを言われました。
 これはかつてあった「救らい思想」と同じもので、私たちの差別意識がいかに根深いものかをものの見事に明らかにする話でした。ですからこの話は、私を含め多くの聞き手の心を抉る力をもっていたと思います。なぜなら私たち一般社会に身を置く者は、自分では気づかずに、このような差別意識を抱きながら、元患者やその家族の方々の人権侵害の加害者の立場に立ってしまう、あるいはすでに立っているからです。
 可哀想だとか、気の毒だとかの次元でハンセン病の問題に関わる者は、このような自分の心の深いところに潜む差別意識―これこそ醜い意識ですが―に気づかず、元患者の方々が人間として当然の権利を主張した時に、潜んでいた差別意識がもろに表面化するという、この話は、ハンセン病の問題に関わる者だけでなく、私たち、少なくともこの国に身を置くすべての者がよくよく弁えておくべきことだと感じました。そして、徳田さんが言われたように、およそ人権問題に関わる者は、被害に遭った方々に寄り添って、共に喘ぎながらも歩んでいくことが大切だと思いました。

 今日さまざまな形の人権被害が起こっています。障害者や高齢者を対象にした殺傷事件が頻発していますが、そこにはやはり加害者の差別意識が働いています。それを見聞きする一般社会の者は、ともするとそれを自分とは無縁なこととして、いわば傍観してしまう。加害者のことを「なんて馬鹿なことをしたのだろう」と見て、それで終わり、ということで日々の雑事にまぎれて忘れていってしまっている、自分の中にもそういう思いで事件を見ている目があることに気づきます。そういうことを思わせるほど、今回の徳田さんの講演は、カヴァーする問題領域の広さと訴える力の及ぶ深さとハンセン病問題の歴史にアタックする射程の長さを持った話しであったと思います。

2018年 ハンセン病を正しく理解する講演会

関東の部 2018年6月23日(土)午後2時~4時  於・国立ハンセン病資料館

講師:藤崎陸安(ふじさき・みちやす)さん
国立療養所多磨全生園入所者
全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長
演題「ハンセン病の現状と課題」

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関西の部 2018年6月30日(土) 午後2時~4時30分 於・日本キリスト教会西宮中央教会

講師:黄 光男(ファン グァンナム)さん
ハンセン病家族訴訟原告団副団長
演題「家族を引き裂いたのは誰だ」~ハンセン病家族からの訴え~

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ハンセン病家族訴訟弁護団 HP 
https://hansen-kazoku-sosyou.jimdo.com/

アーカイブ

  • 19/07/09
    03 国は控訴断念を発表、首相表明。賠償と差別被害、国の責任確定
  • 19/07/08
    03 「ハンセン病を正しく理解する公開講演会」盛会で終了
       「ハンセン病回復者とその家族の今」
       ○関西講演会 6月22日(土)14:00~ 会場:西宮中央教会
       講師:坂手悦子さん(邑久光明園ソーシャルワーカー)
       テーマ「療養所の現場と向き合って」~ソーシャルワーカーの願い~
       ○関東講演会 7月6日(土)14:00~ 会場:國立ハンセン病資料館
       講師:徳田靖之さん(弁護士:ハンセン病家族訴訟弁護団)
       テーマ「ハンセン病家族訴訟が問いかけるもの」
  • 19/06/28
    03 「ハンセン病家族訴訟」熊本地裁で、勝訴判決
  • 19/06/01
    03 昨年開催の『ハンセン病を正しく理解する講演会]講演録発刊
      
    好善社ブックレット No.18 藤崎陸安著『ハンセン病の現状と課題』
      
    好善社ブックレット No.19 黄 光男著『家族を引き裂いたのは誰だ』
  • 18/09/15
  • 18/09/23-25